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ともにゃんの生態

臨床工学技士の「ともにゃん」の個人ブログ。医療機器の管理を中心に日常の戯言を日記にしています。

電気メスの点検

電気メスの点検について

関わっている施設は、ME室の有るところでは8割くらいはあるんではないでしょうか?(そうであってほしい)
逆にME室で電気メスの点検をしていないところは、ME室と言えないのでは・・・とも思うのである。まあ、10台以上あって何も関与していないっていう施設は少ないでしょうが、1~2台だと、チェッカを買って自施設で点検ってことより、メーカー点検に出す方がよいのではないのでしょうか?

電気メスの臨床で問題となるのは、火傷と褥瘡(発赤)の鑑別です!こちらに特集がありますので参考にしてください。

Clinical_engineering_20089 Clinical Engineering 2008年9月号から
手術中に発生する皮膚障害とその予防
 ―機器・器具による障害を考える―

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手術後に発見された臀部皮膚障害に
対する原因究明とその防止対策  

手術室で「電気メスによる 熱傷」と診断される術後の背部皮膚障害が発生した.過去8ヵ月間にも同様な障害が4イ列発生しており,手術部ではこれらの例も電気メスが関与していること を危惧した.これを受けて,手術室配属の臨床工学技士が臀部皮膚障害の原因と電気メスとの関連を調査した.その結果から術中の臀部皮膚障害の防止対策を検 討した.

   虎の門病院臨床工学部

      白井 康之    (Clinical Engineering vol.19 N0.9 2008 p984-987)   
 
1.はじめに

 当院手術室で,ある年の3月28日に泌尿器科の手術後に患者臀部の皮膚障害が発見された.当院皮膚科医はこれを「電気メスによる熱傷」と診断した.手術室では前年の8月からの約8ヵ月間に術後臀部皮膚障害が4例発生していたが,これらはいずれも褥瘡とされていた.しかし手術部長および手術部管理看護師長は,傷害部位の共通性と比較的短期間に集中発生していることから,これらの側も電気メスの関与を危惧した.当時はまだ臨床工学部が設立する以前のことで,手術室に配属されていた臨床工学校上が手術部長および手術部管理看護師長からの依頼で,臀部皮膚障害の発生原因および電気メスとの関係を調査レその結果から臀部皮膚障害の防止対策を立てて実施した.     
 
2.トラブルの概要

200812273  皮膚障害が発見されたのは,泌尿器科で前立腺全摘およびリンパ節郭清術を行った64歳の男性で,麻酔は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用していた.皮膚障害は手術室の回復室で病棟へ戻るためのチェックをしている際に気付かれたもので,手術が終了してから4~5時間経過していた.患部は仙骨部付近で,図1のように横12 cm x縦8cm程度の範囲の上皮が剥離してその部分が発赤しており,皮膚科医が診察し電気メス熱傷と診断した.使用されていた電気メスは接地型のもので,対極板は汎用のディスポーサブル式であった.
  同様の術後の皮膚障害が前年の8月から4件発生していたが,皮膚科医による診断はいずれも電気メスによる障害とはされていなかった.しかし手術部長および 手術部管理看護師長は,その4件と今回の症例とが比較的短期間に集中し類似点が認められることから,今回の症例も含め背部皮膚障害の発生原因および電気メ スとの関係の調査を臨床工学技士に依頼した.調査対象となったのは表1に示す5例で,診療科は婦人科か泌尿器科であり,麻酔は硬膜外麻酔か腰椎麻酔が行われていた.
    
3.原因調査

 まず,電気メスによる熱傷と診断された5例目の手術で使用した電気メスについて,製造メーカに依頼して患者安全試験および漏れ電流測定を行った.また対象の5例の手術で外回りをした看護師に該当手術中の患者ならびに電気メスの状況についてヒヤリングを行った.
 さらに電気メスメーカおよび対極板メーカに対し,看護師に行ったヒヤリングの結果を示して,この症例に対する意見を聴取した.
 以上の結果から臨床工学技士としての見解をまとめ,手術室看護師と協議して防止対策を立案した.
   

3-1 メーカによる試験結果

 電気メスは製造メーカが引き上げ,性能お よび安全性試験を行った.REMn/I対極板での接触抵抗試験,Non-REMn4対他校での接触抵抗試験,アラームの機能限界試験を行ったが,いずれも 基準値と同等であった.出力特性はCUTおよびCOAGで10~15%の許容誤差範囲内に入っていた.リターンフォルト機能試験はCUT.COAGともに 正常動作した.患者漏れ電流および接地漏れ電流は基準値内であった.すなわち,該当装置の点検では異常は発見されなかった.   

3-2 看護師へのヒヤリング

 看護師に対して,表2の項目についてヒヤリングを行った.表1で示した診療科と麻酔の共通性に加え,患者の状態では体位が砕石位か仰臥位であり,臀部の濡れがあったことが共通していた.使用していた電気メスに関しては,いずれも出力異常やアラーム発生という異常動作はみられておらず,術後の対極板にも異常は発見されていなかった.また,皮膚障害発見時点は手術終了直後ではなく,終了後数時間から翌日であった.

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3-3 医師および看護師の見解

 看護師へのヒヤリングを行った際に医師や 看護師から手術中に生じる皮膚障害に対する見解も聴取した.医師および看護師の多くは「術中の臀部は消毒液で濡れやすい部位なので,その濡れた部分を通し て電気メスの電流が流れて,ある程度の温度上昇を起こすのではないか」と考えていた.一部の外科医は,「臀部は圧迫を受けやすい節位なので,血泣か低下し て電気メスの電流による熱がこもって低温熱傷を生じ,代謝を亢進させ圧迫壊死を促進させるのではないか」という意見てあった.いずれも今回の皮膚障害について.他の原因も考えられるが,電気メスの関与があったのではないかという意見がほとんどであった.      

3-4 メーカの見解

 前項の性能および安全性試験の結果を踏まえて,電気メスの製造メーカと汎用のディスボーザブル対極板を製造販売しているメーカにそれぞれ看護師へのヒヤリング結果を示レ 今回の皮膚障害と電気メスとの関連についての見解を聴取した.

1)電気メスメー力

①本体の性能および安全性試験の結果は正常であった.
②リターンフォルト機能や対極板監視回路の動作がなかった.
③術中に電気メスの切れ味の低下は報告されなかった.
④炎症の状態が電気メス熱傷に特有のものとはいえない.

 これらのことから,高周波分流の生じた可能性は低く,電気メスの関与は考えにくいと考えられるとした.また,一部の電気メスメーカの関係者から,皮膚科医の中に電気メス熱傷についての正しい情報が認知されていないことが指摘された.   

2)対極板メー力
 
①皮膚損傷の範囲が横12 cm x縦8cm程度と比較的広い.
②手術終了時に対極板の異常が報告されなかった.
③電気メス本体で対極板アラームが作動していない
④術中に電気メスの切れ味の低下は報告されなかった.

 以上のことから,電気メスの関与は考えがたい.今回の皮膚損傷部位の広さが小児用対極板(市販品では約90~110 cm2)に匹敵する程度のもので,万一,分流が生じていたとしても,この程度の面積であれば熱傷には至らないと考えられるとした.

      
 
4,臨床工学技士の見解

4-1 電気メスの関与について

 電気メスの電流による熱傷は,狭い面積が黒焦げとなり,手術終了時に直ちに発見されるものである.現 在手術室で使用されている電気メスは,対極板の接触不良やケーブルの断線,高周波分流モニタ機能などを備え,異常状態では警報発生率出力を遮断する.今回 使用された電気メスはこれらの性能が正常に保たれており、手術中も警報発生や出力低下は認められなかった.したがって,この電気メスの対極板部位が熱傷の 原因となるとは考えられない.
 また,電気メスは正常状態であっても高周波分流を生じているが.この漏れ電流の値はJISで150 mA以下に制限されているため,分流点の接触面が直径3cm(面積では約7 cm2)以上では2分以上の連続通電でも熱傷を起こす温度に達しない.一方,実際に手術中の電気メスの通電時間はほとんどが5秒未満であることがわかっている.よって,高周波分流による熱傷が生じる危険性はほとんどないと考えられる.
 つまり,メーカと同様に今回検討した皮膚障害はほとんど電気メスの関与はないと考える.また,過去の例についてもほぼ状況が同様であるため,電気メスの関与はないと考えられる.
  

4-2 皮膚障害の原因について

 看護師に対するヒヤリング結果(表2)から,皮膚障害が発生した際,患者の体位は砕石位か仰臥位であり,これは臀部の仙骨部に最も荷重のかかる体位である.濡れにより皮膚とベッドとの密着性が高まるため荷重を集中させ,血流の悪化もきたす.その部位を加湿マットで暖めることは,圧迫壊死の促進原因となると考えられる.また,各患者に共過していた臀部の濡れは消毒液によるものであることも確認された.さらに皮膚障害発見時点は手術終了直後ではなく,終了後数時間から翌日であった.これらのことから,対象とした皮膚障害は圧迫性の壊死あるいは消毒液による接触性皮膚炎と考えられた.したがって,過去の例では当初の診断がほぼ妥当と考えられた.    
 
5.対策の立案と実施

 原因調査を行った臨床工学技士は,手術部長および手術部管理看護師長に対して,調査結果と臨床工学技士としての見解を報告した.三者で検討したところ,いろいろな面で責任問題が生じるため,医師や看護師に対する説明は褥瘡であると断言しなかった.対策として,皮膚障害の原因が電気メスであっても圧迫壊死であっても,術中に哲郎が濡れていることはどちらの危険因子でもあることから,手術室看護師に対しては,タオルや紙おむつを使って臀部やその周辺の濡れを極力なくすように努めることを指示した.また,特に皮膚障害の発生した診療科の医師に対して,手術前の消毒方法について臀部が濡れないように看護師から注意を促すこととした.
 これらの対策を実施してから類似の皮膚障害の発生はなく,対策の成果は上がっていると考えられる.
    
 
6.おわりに

 今回の皮膚障害の原因について臨床工学技士と医師および看護師との見解が異なった原因を追及し次のようなことが考えられた.
 手術室で勤務する医師や看護師は「電気メスは熱傷を起こすものだ」という先入観をもっていたが,実際の熱傷の様子や熱傷が起きる原理,具体的な状況の理解は十分ではなかった.こ のことが術後に発生した皮膚障害に対する考え方を混乱させ,適切な防止対策の立案を妨げていた,これを改善するためには,電気メスによる熱傷の実体だけで なく,手術中に生じる臀部皮膚障害発生のメカニズムについても,医師や看護師に対して正しく理解し納得できるようにわかりやすく解説していくことが重要で ある.


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  1. 2013/02/08(金) |
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