FC2ブログ

ともにゃんの生態

臨床工学技士の「ともにゃん」の個人ブログ。医療機器の管理を中心に日常の戯言を日記にしています。

救急医療の崩壊の1原因

今日は、救急告示病院について考えさせられる記事があったので、「新小児科医のつぶやき」より転用させてもらいます。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/

救急医療の危機が「たらい回し」問題とともにクローズアップされて久しくなっています。その中で静かに注目されている問題が救急告示病院の問題です。救急告示病院は俗に救急病院とも呼ばれ、救急医療の主体を為す病院ですが、この救急告示病院の質が問われています。救急告示病院は1964年に救急病院等を定める省令によって定められ、1987年に一部改正され現在に至っています。この省令で救急病院に求められる条件は、

簡略にすると、
  1. 人員条件:救急医もしくはそれと同等の能力のある医師が常駐している事
  2. 設備条件:救急医療に必要な設備・機器が備えられている事
  3. 構造条件:救急隊の搬送がスムーズに行なわれる構造である事
  4. 病床条件:救急患者を受け入れるのに十分な病床を持っている事

省 令が1964年に出されてから44年、1987年に一部改正されてから21年が経過しており、医療関係者以外は「これらの条件は満たされていて当然」と考 えられても不思議ありません。年月からして「当初は・・・」なんて時期は遥か昔に終わっているからです。しかし現実はそうではありません。どの救急病院で も達成できている条件は「構造条件」ぐらいのものかと考えられます。設備条件も「機器の存在」として満たされているところは多いかもしれませんが、設備は あってもこれを動かす人員が配置されていません。

4条件を曲がりなりにも満たしているのは三次救急の救命救急センタークラスにな り、救命救急センターでさえこれを満たしていないところは決して珍しいものではありません。ましてや数の上では大多数を占める一次・二次の救急病院では満 たしているところなど、あるかないかのレベルになります。

なぜ省令の条件が満たされなかったか話が長くなるのですが、簡単に言え ば条件の整備は病院の自助努力とされ、なおかつ満たされていなくとも平気で認可されてきた経緯があるからです。救急医療は公的補助を受けても赤字部門であ り、病院としても条件を満たすために予算を投じても収支は改善するものでなく、さらに満たさなくとも何の問題も無く認可されるのであれば、条件整備のモチベーションが起こらず放置されてきたとしてもよいかと思われます。もちろん根本的に人員条件を満たす医師が、44年前でも、21年前でも、今でも全然足りていないのもあります。

こ ういう条件を満たしていない救急告示病院を「なんちゃって救急病院」と呼んだりする事があります。「なんちゃって」だから役に立たないかといえばそうでは ありません。「なんちゃって救急病院」が救急医療に果たして来た役割は莫大です。「なんちゃって」ですから十分なレベルとは言い切れないかもしれません が、「なんちゃって」程度の戦力で事実上、日本の一次・二次救急を支えてきたのです。戦力からすると「異常なぐらいの戦果」としても良いかと思います。

ところが最近になりこの「なんちゃって救急病院」に対する風向きが厳しくなっています。医師から見た労働環境の話は今日はさておきますが、世間と言うか患者サイドの要求が強くなってきています。ごく簡単には

    省令の条件を満たしていない救急告示病院は許さない

考 えてみれば「正論」であり、本来満たしていない方がおかしいと言えばおかしい事になります。ただ「正論」であっても省令の適用を厳格にすれば救急病院の殆 んどは存在が許されなくなります。たとえ予算を投じても「人員条件」は絶対に満たされませんから要求として不可能になります。「病床条件」も事実上不可能 な要求です。「正論」で要求されても事実上不可能な状態である事から、議論は2点に絞られます。

  1. 「正論」の要求に従い条件を満たせない救急告示病院はとっとと撤退すべし
  2. 「正論」を満たす病院だけでは救急医療を維持できず、現状を是認しながら漸次改善を目指すべし

医 師はなんと言っても「医療バカ」ですから2.の意見が従来主流派でした。ラジカルに撤退すれば救急医療が崩壊し、患者の不利益は目に見えているとの考えか らです。ところが「正論」による要求は段々強くなっていますし、要求以前に「当然満たしているもの」として救急病院を叩く動きが目立ってきています。とく に「叩く」が司法の場でも明らかになってきており、医師の意見は2.から1.に大きくシフトしつつあります。1.にシフトする理由は今日はさておいた労働環境の問題もありますし、漸次改善の方向性では「何も変わらない」の思惑もあります。

もう一つ、叩かれての新しい動きに救急病院サイドに積極的に撤退の動きが明らかになっている事です。救急医療は赤字部門です。時代によっては救急医療の赤字部門ぐらいは余裕でカバーできた時代もありましたが、長期の医療費削減政策の下でそんな贅沢が経営として許されなくなってきています。しかし救急告示病院をやめるには様々なしがらみがあり、その点で悩んでいるところに「正論」がでてくれば渡りに舟状態になります。「正論」に従って不十分な条件だから救急を撤退する大義名分です。

救 急医療全体の維持と言う観点からすれば、現状を是認した上での漸次改善がベターと思うのですが、そういう曖昧な体制では許されない状態が現在の医療です。 ではでは「正論」に従って省令適用の厳格化を行なえば、生き残る病院は果たして全国に幾つあるかの問題になります。「なんちゃって救急病院」を是認しない と救急医療体制は崩壊する一方で、「なんちゃって救急病院」の存在は許さないの「正論」が濶歩すればどうなるかの究極の選択のようにも思われます。

スポンサーサイト



  1. 2008/08/12(火) |
  2. 救急・災害
  3. | コメント:0

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する